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新人賞受賞に向けての分析

月夜よし

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酔っちゃった、なんて今君に言ったらなんて返されるのだろう。は? なんて怪訝な顔をされるに違いない。「香織さん、顔も白いし、意識もはっきりしているし、それで酔ってるなんて言えるんですか?」なんて冷静に返されるのが関の山だろう。
そんなことを考えている間にも、司くんの話は止まらない。同期の中で飛び抜けて負けず嫌いで、意欲に燃えている司くんの話を聞くのは楽しい。けれど、司くんの話を聞いていると、とりたてて秀でているところも、熱意もない私という存在は、溶けて消えてなくなってしまいそうになる。司くんの視線は私を突き抜けて、未来を見ている気さえするのだ。そのくらいに鋭い眼光が私はとても恐ろしくて、それでもそのはっと驚くほど透明な光を見ずにはいられない。
司くんは、私のことをどう思っているのだろう? 職場でよく顔を合わせる同期? 司くんから見たら、向上心のない私のような存在は、同期の中でも取るに足らないのかもしれない。こっそり司くんに憧れているだけの、ちっぽけな女。私の淡い好意なんて、きっと司くんには筒抜けなのだろう。
アルコールが入った司くんの目は赤い。頬も赤くて、いつもキリっとしている目つきは心なしかトロンとしている。司くんの頬に触れたい、と思った。ここが職場の飲み会であることなんて忘れて、隣にいる司くんに触れたい、と思った。酔っちゃった、なんて言い訳すれば良い。そうしたら、彼はなんて言ってくれるだろう。少しは彼に印象を残すことが出来るだろうか。酔っちゃった、なんて言葉で君をかき乱してみたい。今はふわりと緩んだその視線を捕まえて、どうかその先を期待させて。